下肢静脈瘤プラザ|最新の下肢静脈瘤レーザー治療。|東京都江戸川区の江戸川病院・千葉県市川市のメディカルプラザ市川駅

両足に下肢静脈瘤があり、数年経っています。
現在の状態は、右足下部15cm位赤黒くなっており、胸・腹・肩・両足には皮膚病があります。
レーザー治療を受けた場合、この皮膚病や下肢静脈瘤は治癒期間はどのくらいかかるのでしょうか。
よろしく回答を願います。
(70代、女性)
 

A:回答

膝下の皮膚病に悩まれている下肢静脈瘤の患者様は多くいらっしゃいます。これは、下肢の静脈うっ血により皮膚の循環が悪くなるのが原因です。つまり、これも静脈高血圧のひとつの症状なのです。
 

1. 皮膚病変と下肢静脈瘤の関係

下肢静脈瘤の重症度は、国際的に決められた分類(CEAP分類)によると、全部で6段階に分かれています。皮膚に茶色い色素沈着や湿疹、皮膚が固くなっている場合はレベル4とされ、重症の部類に入ります。これが進むと皮膚潰瘍ができ、最高のレベル6になります。ちなみにレベル5はこの皮膚潰瘍が治った状態ですが、病気の進行度を考えると、レベル6とほぼ同等であると思っています。
 

これらの皮膚病変は、あくまでも下肢に血がよどむことが原因なので、出現する場所は膝下、とくにくるぶしから15cm以内に起こることが多いです。つまり、この部分に最も血がたまりやすいわけですよね。
 

お問い合わせの中では、胸・腹・肩にも皮膚病変があるようです。これらの場所は基本的に血がよどんでくる場所ではありません。つまり、下肢静脈瘤で起こる皮膚病変とは根本的に違うことになります。これらの皮膚病変については、皮膚科専門医の診察を受けることを強くお勧めします。
 

それでは膝下の「赤黒い」色素沈着はどちらが原因なのでしょうか?
 

答えは、どちらの可能性もあります。膝下の皮膚も全身の皮膚の一部ですから、上半身と同じ皮膚病変がでてきても不思議ではありません。しかし、長年にわたる下肢静脈瘤があるわけですから、その部位には血のよどみもあるため、うっ血による皮膚病変が出てきてもおかしくないのです。
 

黒く変色している部位は、ほかの皮膚と比べて固くなって、少しつや光が出ていませんか? もし、そうであれば、皮膚のみならずその下にある脂肪組織までも委縮する脂肪皮膚硬化症になっている可能性があります。これはあと戻りがむずかしい皮膚病変で、うっ血による皮膚病変の最終段階に入る入口なのです。つまり、皮膚潰瘍になる一歩手前の状態です。
 

私の経験では、足に全身性の皮膚病変とうっ血による皮膚病変が混在していても、下肢静脈瘤の治療をすることで、足の皮膚病変がかなりよくなった患者様を知っています。この方は、皮膚科専門医とコラボレーションして治療しました。病気が皮膚科と血管外科の領域にまたがっているわけですから、それぞれの専門医が協力し合えば、道は必ず開けてくるのです。
 

下肢静脈瘤についてはすでに専門医の診断を受けていますか?もしまだでしたら、早めに下肢静脈瘤の専門医療機関を受診してください。その際は、皮膚科専門医の紹介状があると、スムーズに診てもらえると思います。
 

2. 治療と治癒期間

治療は下肢静脈瘤の治療と皮膚科の治療を同時進行させると、膝下の皮膚病変の治癒期間も短くなると思います。しかし、上半身の皮膚病変は、下肢静脈瘤とは直接関係がないため、地道に皮膚科治療を継続する必要があります。
 

下肢静脈瘤の治療法は、下肢静脈超音波検査の結果によりますので、レーザーや高周波による血管内焼灼術だけとは限りません。このようなケースでよく見落とされるものに、穿通枝不全(せんつうしふぜん)があります。
 

穿通枝とは、足の中心部や筋肉の中を通る深部静脈と皮下脂肪の中を通り下肢静脈瘤をつくる表在静脈を結ぶ、いわばバイパスの静脈です。通常はこの静脈にも弁が存在し、表在静脈から深部静脈へのみ血が流れるように交通整理をしています。しかし、この静脈弁がこわれると、深部静脈から表在静脈に向かって血が逆流して、下肢静脈瘤の原因になることがあります。まるで、道路の下にある水道管が破裂して、噴水のように道路に吹き上がっているような状態です。
 

皮膚病変を伴う場合は、かなりの血液がよどんでいるシグナルです。太ももから静脈弁不全で落ちてくる血液だけでなく、このような穿通枝不全もある可能性は高いです。私は、このような患者様には時間をかけて、膝下の穿通枝のありかをいつも探しています。だいたい、色素沈着のある頭側に数本くらい見つけることがあります。
 

このような場合は、血管内焼灼術だけを行っても皮膚病変は治りにくいと思います。きちんとした診断が必要なわけです。
 

さて、治癒期間ですが、下肢静脈瘤の治療がうまくいけばうっ血はなくなりますので、足はかるくなります。いままでよどんでいた血液はなくなり、皮膚の新陳代謝はかなり改善します。
 

しかし、色素沈着や皮膚の硬化病変は長年の蓄積でできたものですので、簡単にはなくなりません。だんだん色素沈着がうすくなったり、皮膚に柔らかみはでてきますが、病気を放置していた年月くらいはかかると思った方がいいでしょう。
 

私の経験では、だるさやむくみなどのうっ血による症状は3カ月以内にほとんどがなくなります。しかし、うっ血による皮膚病変は湿疹であれば1カ月くらい、潰瘍であれば6カ月くらいで治りますが、色素沈着は完全に消失することはなく、薄くなるにも数年かかります。ですから、皮膚病変がではじめたら、早めに治療することが重要なのです。
 

以上、私の経験からわかることをお話ししました。是非、信頼できる皮膚科と下肢静脈瘤の専門医を探してくださいね。